Original File: [1992.12.17] Updated: [1996.12.01]

EMS処理による突然変異の誘起法


 EMS(ethyl methanesulfonate;エチルメタンスルフォン酸,メタンスルフォン酸エチル)は揮発性の突然変異誘起剤である.密封して冷暗所に保存し,使用に際しては必ずドラフト内で取り扱う(EMSは甘酸っぱい臭いがするという).1N NaOH と混ぜれば数分間で活性を失うとされているが,この処理により完全に無毒・無害になると明記されたテキストを見たことはない.化学的突然変異の誘起処理は生物学的実験において最も注意を要する作業の一つである.変異剤を生物学的効果のある濃度と規模で取り扱うことに注意されたい.(これに対して生物学で用いる放射性同位元素はあくまでもトレーサーでしかない)

 EMS(例えば Aldrich 22,050-7)はメーカーによっても,また,ロットによっても効き方が異なるといわれている.小規模のパイロット実験を行い,目で見て容易に判別できる変異の出現頻度を調べることで,処理条件(濃度,時間)を決めるのがよいとされる.(面倒なので,当研究室では特別な場合を除いてパイロット実験は行っていない.)

 古くなったEMSを用いると毒性を持つためか発芽率が低下する傾向がある.従って,最少量を購入すること.古くなったEMSをため込んでしまうとやっかいである.冷蔵庫に放置したまま忘れられたEMSが,気がついてみたら揮発してしまっていた,という事態にならぬよう.

 具体的方法については,下記解説を参照されたい.



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日本語の解説等


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序 論

 突然変異の誘起には古くから薬剤を用いる化学的突然変異誘起法と電離放射線を用いる方法が用いられてきた.前者の方法では主に塩基置換が起こり,後者の方法では染色体の欠失,逆位,転座等が起こりやすい.いずれの場合も,生物材料によりその方法はかなり異なる.また,トランスポゾンやT-DNAの挿入により突然変異株を得るのも突然変異の誘起法に加えることができよう.

 シロイヌナズナでは化学的突然変異誘起法としては吸水直後の種子に対するEMS処理が有効である.EMSはアルキル化剤であり,DNAに直接作用して塩基を修飾し,DNA複製の際に元とは異なる塩基が取り込まれることにより突然変異を引き起こすと考えられている.一方,電離放射線を用いる方法としては古くはX線を用いるのが主流であったが,現在ではX線の他,γ線や速中性子線を用いる方法も多用されている.


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引用文献


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1.種子の洗浄,吸水:上記解説を参照


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2.EMS処理:上記解説を参照


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3.播種(はしゅ):上記解説を参照


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4.採種:上記解説を参照


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